生誕50周年展 聖先生作品コメント(第1期)

・プレ「超人ロック」扉イラストなど
 扉絵風のものは作画グループにロックの第1作目を送る前、一番最初に思い浮かんで描いたロックのイメージイラストです。「超人ロック」はここから始まりました。タイトルは、ロック歌手ドノヴァンの「狂人ロック」からです。
 無地のレポート用紙に描かれたロックは、その後のロックらしい顔なので、高校時代のノートに大学時代に描いたのかもしれない。横のは「エネセスの仮面」のエネセスですね。テレパシィとかテレキネシスとか超能力用語も書きだしてますね。自分自身はエスパー用語はヴァン・ヴォクトの『スラン』やハインラインで知りました。

・「超人ロック」第1作表書き、東考社版『超人ロック』総扉
 「超人ロック」の第1作の表書きには、OP11と入っています。これはラテン語でオーパス11、つまり11作目という意味です。これまでの私の作品リストでは、所属していた同人サークル「作画グループ」に発表したものがまず4作並んでいて5作目が「超人ロック」になっていますが、それ以外に6作描いていたということです。3作分は高校時代に友人と作った同人誌に描いたもの。1作分は作画グループ初の女性会員・深沢みどりさんの同人誌に描いたもの。残り2作は…ちょっと覚えていない。たぶん完成していないものを混ぜていたのじゃないかな(笑)。
 赤い表紙の東考社の単行本は、ロックがはじめて印刷出版されたもの。タイトルが鏡文字で入ったイラストは、確かその単行本扉用に描いたイラストです。

・ニムバスと負の世界
 この原稿は「超人ロック」第1作の巻頭カラーページです。高校3年生の17歳の時に描いて、「作画グループ」に送りました。到着した側はすごく長いので驚いたようです。1作ごとにページ数を増やすことに決めてしばらく実行していました。ロックが最初に女性の姿で出てくるのは、意表を突く登場のしかたを一生懸命考えた結果です。
となりは、ロックがいわゆるロックの格好をして初登場するページと、ロックが名乗りを上げているページ、そしてニムバスがロックの欠点を指摘するページです。ロックはこの後見栄を切るようなキャラクターではなくなるので、名乗りを上げるシーンはとても珍しい。
 「ニムバスと負の世界」のシリーズタイトルは、東考社版の単行本を出すときに決めました。最初はただの「超人ロック」でした。ニムバスの名はNASAの気象観測用人工衛星ニンバス(Nimbus)からです。神様がまとっている雲「光雲」という意味なんです。「ハリー・ポッター」にも箒の名前で出てきましたね。ただ、こちらは少し綴りと読みを変えてニムバス(Nymbas)としました。

・この宇宙に愛を
 1作目を巻頭カラーにしたので、2作目は巻末カラーにしようと思いました。このときは新しい絵の具を手に入れて嬉しくて。ポスターカラーと普通の透明水彩を使っています。これは当時大変評判になりました。色キチガイとかなんとか(笑)。原画をそのまま綴じる肉筆同人誌だから出来たことですね。

・うちの兄貴、らぶれたぁ作戦、恋をさがそう!

 商業誌では少女マンガでデビューしました。「この宇宙に愛を」を読んでくださった小学館の編集者・大西亘さんが声をかけてくださったんです。少女マンガを描くことになってから、模写したりしてずいぶん練習しました。当時練習した少女マンガ家さんは、西谷祥子さん、大和和紀さん、水野英子さん、忠津陽子さんとかかな。他にもたくさんの方の練習をしましたよ。

・炎の虎
 『週刊少年キング』の担当編集者の坂本さんが、僕がオーディオマニアだというのを知っていて「オーディオギャグマンガ」を、と最初言っていたのにいつのまにか「超人ロック」を描くことになっていたんですね(笑)。連載が決まっても、ロックを最初に描いてから10年以上経っていたし「いまさらロックで何を描こうかなぁ」って思ったのを覚えてます(笑)。
 予告に「同人誌から生まれた」とあるのは、『キング』が以前に作画グループの特集を組んで、合作「1000万人に2人」(1978年45-46号)も載せていたからでしょう。
 アマゾナは、少女マンガで女の子を描きなれていたから出そうと思ったのだったかも。ロックはアマゾナから「光の剣」(当初はサイコスピア)をコピーするんです。

・魔女の世紀
 「魔女の世紀」は連載当時から評判がよかったです。ヤマキは最初から今もずっと人気のあるキャラクターですね。ヤマキとジェシカ夫妻の双子、ケンとハルナのシリーズは『キング』連載の頃の「ロック」がわりとシリアスなものが多かったので、コミカルに描くようこころがけました。

・ロード・レオン
 「ロード・レオン」は、連載時は「あまり人気が出なかったね」と担当の坂本さんが言っていたのを覚えています。でもその後イメージアルバムが出たりOVA化されたり。「これが好きです」っていう方が後からけっこう出てきて「あれーそうだったのかー」って。
 ロックはロード・レオンから「エネルギー吸収球」をコピーします。ロックの技は基本誰かからコピーしたものなんですよね。吸収球から刀が出てくるシーンは、近作の「ラフラール」でも描いたんですが「ずるい!」って読者の方に言われました(笑)。ルーツは白土三平あたりです。音を出す手裏剣を投げて気を逸らせておいて、死角から別の武器を飛ばしたりするやつです。
 「赤ちゃんに戻ったロード・レオンはどうなるの?」という読者の声があったので「アウター・プラネット」で、アレクセイ部長として登場させました。

・ロンウォールの嵐
 「ロンウォールの嵐」は難しかったです。革命に失敗する話ですから。革命を起こせばすべてうまくいくんじゃないかというような考え方が、自分はあまり好きじゃないというか「そんな簡単なもんじゃないだろう」と思ってしまうんですよね。
 ストロハイム大佐のメガネ越しに目が見えるというのは、担当の坂本さんが昼でも夜でもサングラスをかけている人だったんですよね。暗くなるとレンズの色が薄くなるサングラスがあって、以前流行ったんです。それをかけていて、目が本当にこんな感じに見えたんですよね。今考えるとそこから来ています。
 右下の原画は「巻末カラー」ならぬ「巻末2色」ですね。最終回の最後が数ページ2色なんです。普通は2色などは巻頭に来るので特別なことですよね。自分で依頼したのではなく、坂本さんがそうしようと言ってきたと思います。「この世界に愛を」を意識してくれたのかもしれない。

・冬の惑星
 「ロンウォールの嵐」がわりと救いのない話なので、少し希望の持てる話にしようと思って描きました。
 ニケは人気がありました。色をどうしようか迷った記憶があります。メカっぽさを出したいけれど、女性型のメカなのでバランスが難しいなと思って。最終的に青にした理由は覚えてないです。

・サイバー・ジェノサイド
 「サイバー・ジェノサイド」も救いのない話なんですよね。「超人ロック」の世界でサイバーを禁止することにしたのは、高度なCPUを入れれば入れるほど、CPUが選択する合理的な判断と、人間の意志とがぶつかっちゃうんじゃないかなと思って。技術が進めば進むほどその齟齬は大きくなって壁にぶちあたるだろうという。
 ただ、違法ながらもあるところにはあるんです。例えば「魔女の世紀」のレディ・カーンは自分から進んで肉体を捨てた人なのですが、あれはサイバーなんじゃないかなぁ。あと「エピタフ」には脳だけの船というのが出てきます。あれはレムスと一緒なので完全に違法です。

・光の剣
 ラフノールはロストコロニーという設定で、独特の用語が使われている世界にしました。いろんなギミックを出しているけど、それがハードじゃない。機械っぽくないけどSFというのが描きたかった。
 そもそも日本ではヒロイック・ファンタジーというのがそれほど無くて、ゼルダの伝説とかドラクエとかが流行ってからワッと広がりましたよね。以前描いた「黄金の戦士」(1978-80年)のときはもっと無かったんです。でも海外にはあった。「ムアコックがSFなんだからいいんじゃないかな」と思って。移民船が壊れて不時着した星でそのまま生き残って、超能力でもなければ生き残れないほど環境が厳しかったから、超能力者だらけの星になった…といったような世界の成り立ちがベースにあってお話が展開するというように、科学的説明があるかどうかがSFであるかどうかの分かれ目かな。

・星と少年
 超能力をコントロールするための修行というか、練習をするシーンは、この後もよく出てきます。いろんな方法を考えた中で、一番視覚化してイメージが伝わりやすいと思ったのが、この方法と描き方でした。

・聖者の涙
 「聖者の涙」(1991年連載開始)は、『少年KING』でのロックが終わって(1989年終了)からだいぶ間があいたので、久しぶりのロックの連載で気合が入っていましたね。以前特集してもらった『月刊OUT』で描くことになったいきさつは、あんまり覚えてないです。

・ソード・オブ・ネメシス、オメガ
 「ニムバスと負の世界」と「この宇宙に愛を」を今描くとどうなるのかやってみたくなったんです。
 ニムバスが、海賊のキャプテン・ニムバスとして出てくるところは同じ。アイザックも出てきますが、アイザックは筋肉ムキムキのキャラクターになってしまいました(笑)。ロックが女体化して出てきたりしませんし、だいぶ変わってしまいましたね。「第三波動」の概念も少し変わりました。時間も空間も存在しない世界に同じ人間が無数に存在することになる、その最後の存在が「オメガ」というところは変わっていません。

・冬の虹
 銀河連邦ができる前の時代を描いています。「ロックはいつの時代からいるのかな。ひょっとしたら今この現代にもいるのかも」という考えから生まれました。超能力者はここでは「スキャナー」と呼ばれています。ロックはまだ超能力をそんなに使えなくて、ノートパソコンを使っていたり、超能力をコントロールするのに視覚が邪魔で目隠ししていたりします(笑)。

・凍てついた星座
 「凍てついた星座」は、出てきたエスパーたちでまた話を描いてみたいなぁと思っているところです。カルベルとかパエトンとか4姉妹とか。まだどうなるかわからないですが。

・エピタフ
 「エピタフ」はロックがほとんど出てこない話ですね。ホントはブリアンが出世してド・ラージュ大臣になるまでを描こうと思っていたんです。

・ファルコン50
 「ファルコン50」は、以前描いた「スペースマンA」をもっと描いてみたかったのでやってみることにしました。展示のカットは、その「スペースマンA」を描く前の、アイディアの元になったカットですね。

・カーレース作品特集、GPグリフォン、ハヤトの挑戦
 カーレース物は、出版社から依頼があって描いたことはなくて、何を描いてもいいよと言われると描いていました。
車大好きです。ドライブするのが好きなんです。そういえば海軍のパイロットをしていた父も、家族を乗せてドライブをするのが大好きでした。

・忍者キャプター

 キャラクターデザインをしたので、マンガも描くことになりました。風忍がフレンチホルンみたいなのを吹くのですが「ラッパを吹かせたら?」といったのは僕です。
 敵のデザインも考えることになって、シナリオを読んでからデザインして大泉の東映撮影所に持って行き、近くの喫茶店でプロデューサーと打ち合わせをしていましたね。

・COSMICSTRIPS MAGAZINE
 『COSMICSTRIPS MAGAZINE』は、自分と高校のなかま二人と作った同人誌です。この本で、聖悠紀の名前が初めて使われています。最初はなかまの一人との合作用のペンネームで、名字は私が古典の授業の時に決め、下の名前はなかまの名前の「良則」を「由紀」と変え「ひじりゆき」と読むことにしました。その後一人で使うようになって「由」の字を「悠」に変え「聖悠紀」表記にしたんです。

・高校・大学時代のカット・イラスト

 緑のスクラップブックは母親が僕の描いた細かなカットとかを集めて貼って作ってくれていたものです。セロテープが劣化してもう全部取れてしまっていますが。

※文書は、新潟での原画展のコメントを書き起こしています(原画の展示位置に関する表現などが東京の時とはちょっと変わっていたりするようです)
※文書は原文ママ
※誤字・脱字があったらご指摘ください。
※最終的には、作品の個別ページができたら、そちらにも移動する。

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